白狐通信

「Bloom」

3月8日から始まった、GOFUN日本画プロジェクト公式サポーター 鬼頭祈さんの個展を見に行ってきました。
鬼頭さんとの出会いは3年ほど前。ツイッターに投稿されていた胡粉ネイルのイラストにひとめぼれ。日本画の技法を生かしてイラストを描かれていることが分かり、是非ともご一緒したいと連絡をとったのがキッカケで、今では毎年クリスマスカードのイラストを描いてもらってます。ツイッターに投稿されていたイラストは上羽絵惣のギフトボックスに付けるポストカードになっているんですよ。
私が個展に行くのは前回開催された京都から約2年ぶり!ワクワクしながらスタッフ2名で大阪へ向かいます。
鬼頭さんとお約束した時間より少し早く着いたので、先に作品を見学。眺めていると愛おしさを感じるのは、小人や動植物が描かれているせいでしょうか。

綺麗なだけではない恐ろしさも感じる「春」

鬼頭さんに今回のテーマについてお伺いしました。
春はお花見や新生活のスタートなど明るく元気なイメージがある一方、草花の芽吹きや生き物たちの孵化でいろんなエネルギーがうごめいている。そのエネルギーに圧倒されるのか、昔からこの時期は「木の芽時」と言われ心身に不調をきたす人も多いんです。
そんな時、人間とは言え動物的本能に逆らえない部分があるんだな感じます。
櫻の木の下には屍体が埋まっているから綺麗なんだ、と梶井基次郎の小説で書かれたように、美しさと恐ろしさのある春が興味深く、そういったところを表現してみました、とのこと。

苺がメタモルフォーゼ!?

モチーフとされている苺も品種改良されている種類が多く、均一な形の中に先祖返りしてしまったようないびつな形のものが混ざっていたり、そこにも生命のうごめきを感じます。品種改良だと、例えば金魚だったら黒を入れてみようと改良したり、動物も色を変えたり、まるで絵具のように扱っているところも興味深く、自然素材(生き物)と創作の関係性が日本画絵具(自然素材)と絵画にもつながるところがあるので面白いなと感じています。とそれぞれの絵を見ながら解説を聞いていると、最初の印象とは違って見えてくるから不思議です。

和紙と相性の良い胡粉

胡粉(白)も印象的でした。印刷したり、白い紙の上では胡粉の色は見えづらくなってしまうのですが、和紙の上では白が浮き出て光の加減でより鮮明に。
夕方に少し薄暗くなった家の中で見るとより白が浮き立つので、、蛍光灯などがなかった昔の薄明かりの中で、ハッキリ見えるのが本当の胡粉の見方なのかもしれないです。いろんな灯りで見ていただきたくなっちゃいますね、と鬼頭さん。

実はモデルがいるんです
この作品に登場するねずみは鬼頭さんが飼っているねずみがモデルなんです!パンダマウスという種類ですが、江戸時代には「豆ぶち」の名前でペットとして飼うのが流行ったそうですよ。そう言えば浮世絵に描かれているのを見たような…。
野生にはいないようなので、まさに自然素材と創作の関係性を見せてくれる存在ですね。

絵は生き物のよう

今回の作品は墨以外すべて上羽絵惣の絵具を使って描いているそうです!
私たちは小売店に絵具を卸しているので、どんな方に使っていただいているのかなかなか知ることができません。こうして実際に作品になったものを見られることも少ないので、とても嬉しく貴重な体験です。
画像の絵は、墨と岩絵具の岩紅8番を使って描かれています。やわらかで落ち着いた色合いが墨との対比でとても印象的に見えました。
絵具や紙、墨も自然素材に近いものだし、絵は静止しているように見えて少しずつ変化しているんだろうなと思うと、絵だけど生き物みたいに感じます、とおっしゃってました。
印刷では絵具の色の鮮やかさや透明感はなかなか感じることができません。鬼頭さんはそれぞれの色の完成された美しさを生かそうと色を混ぜずに使っているとのことなので、ぜひ原画を見て色を感じてください。


開催期間/2019年3月22日(金)まで
時間/10:00~21:00(最終日18:00まで)
場所/DMOARTS (LUCUA1100(ルクアイーレ)7F)
夜9時まで開いているのでお仕事帰りにも寄れそうですね。

鬼頭祈オフィシャルウェブサイト
https://www.inorikito.jp/

更新日: 2019年03月19日 @上羽絵惣スタッフ